お知らせ
「見るだけ」の耐震実験じゃない。
FIELDWORK REPORT 愛知県立豊明高等学校 × 古田研究室
高校生が試験体をつくり、力を加え、その変化を見届けた一日
耐震のレクチャーを受けたあと、木材を手に取り、研究室の学生と一緒に試験体を組み立てる。完成した試験体を載荷装置へ据え付け、実際に力が加わる様子を見つめる。愛知県立豊明高等学校の生徒1名と担任の先生を迎え、知識が実感へ変わる終日のフィールドワークを行いました。

1. 最初の問いは「地震に強い家とは何か」
一日は、木造住宅の耐震について考えるレクチャーから始まりました。地震の力は建物にどう伝わるのか。壁や接合部は、揺れに対してどのような役割を果たすのか。実験に入る前に、これから自分の目で確かめる現象の土台を学びます。
今回の参加者は、高校生1名と担任の先生の2名。少人数だからこそ、疑問が浮かんだところで立ち止まり、図や資料を見ながら確かめることができました。講義を「聞いて終わる」のではなく、午後の作業と結びつけるための時間です。
2. 知識を得たら、今度は自分の手を動かす
午後はヘルメットを着用し、実験施設へ。目の前に用意された木材は、まだ一本一本の部材にすぎません。それを正しい位置に合わせ、研究室の学生と声を掛け合いながら組み上げていきます。
寸法を確認する。部材を支える。木づちを振るう。わずかなずれを見つけて調整する。画面の中では一瞬で描ける骨組みも、実物をつくるには、精度と段取り、そしてチームワークが欠かせません。
3. 一本の木材が「研究の対象」に変わるまで
組み立て作業では、古田研究室の学生が手順と道具の扱い方を伝え、生徒も工の一員として参加しました。木材の重さや表面の感触、部材同士が納まる手応えは、完成した建物を眺めるだけでは分かりません。
試験体を自分の手でつくると、「どこに力が集まりそうか」「この接合部はどう動くのか」という問いが自然に生まれます。つくる経験が、その後の実験を見る目を変えていきました。

実験に必要なのは、大きな装置だけではありません。条件をそろえた試験体をつくり、計測の準備を整え、安全を確認する。その一つひとつが、信頼できる結果につながっています。今回の体験では、普段は見えにくい研究の「準備」まで学びの対象になりました。
4. 組み上げた試験体を、自分たちで載荷装置へ
完成した試験体は、研究室の学生とともに載荷装置へセットしました。組み立てたものが、実験装置の中で一つの構造体として立ち上がる。その瞬間、午前中に学んだ耐震の話と、午後に手を動かしてきた作業が一本につながります。
載荷装置は、試験体に所定の力や変形を与え、その応答を確かめるための装置です。試験体の周囲では、取り付け位置や計測機器、安全を確認しながら、慎重に準備を進めます。

「実験を見る人」ではなく、「実験を成立させる人」の側に立つ。今回のフィールドワークを象徴する場面となりました。
5. 力を加える。変形を追う。データと実物をつなぐ
準備を終えると、いよいよ載荷実験です。装置が動くにつれて試験体がどのように変形するのかを観察し、同時にモニターへ描かれるグラフにも目を向けました。目の前で起きている変化が数値と線になって表れることで、「耐震性能を調べる」という言葉が、具体的な研究の姿を持ちはじめます。

6. この一日で変わった「耐震」の見え方
建物を安全にする技術は、講義だけでも、実験だけでも生まれません。知識を得て、つくり、力を加え、変化を観察し、結果を考える。一連の工程を自分でたどったからこそ、耐震は教科書の用語から、人の命と暮らしを守るための現実的な課題へと変わりました。
・ つくることで分かること 部材の重さや納まり、接合部の意味を身体で理解する。
・ 動かすことで見えること 力を受けた試験体の変化を、実物とデータの両方から捉える。
・ 一緒に取り組むことで広がること 大学生と作業し、研究や進路を身近なものとして考える。
愛知県立豊明高等学校の生徒さん、担任の先生、このたびはご参加ありがとうございました。長い一日の最後まで熱心に取り組んでいただき、研究室の学生にとっても、学びを伝える意味を改めて考える貴重な機会となりました。今回の経験が、建築や防災、そしてこれからの進路を考える小さなきっかけになることを願っています。
